(13) 「まえよりも ふっくらと」―与え続けるために
「よおし、こんどは
もっと おおきい ぱんに して
もっと おいしい あんこを
いっぱい いれておいたよ。
さあ、できた。」
あんぱんまんは まえよりも
ふっくらとした かおに なりました。
ぱんつくりのおじさんは、焼きあがったパンを、
あんぱんまんの体の上に置きます。
そのときの、あんぱんまんの顔の嬉しそうなこと!
おじさんの表情も幸せに満ちています。
あんぱんまんは、なぜ与え続けられるのか。
全ての答えは、このあんぱんまんの笑顔が物語っています。
結局のところ、あんぱんまんにとって、
おじさんに新しい顔を作ってもらうことが、
この上ない喜びなのです。
おじさんが生地をこねているときに聞こえる歌。
こねられながら感じるおじさんの優しくて力強い手。
焼き上がった顔を両手で優しく肩にのせてもらうときの感じ。
そのときに見えるおじさんのくしゃくしゃの笑顔。
おじさんと過ごす、この時間、この瞬間こそが、
あんぱんまんが飛び続ける原動力になっています。
あんぱんまんには、飢えた人を救うという使命があります。
しかし、使命感だけで与え続けることはできません。
その使命感を支えているのは、おじさんから惜しみなく注がれる愛情です。
あんぱんまんは、新しい顔を受け取るという行為をとおして、
おじさんの愛情を確かめ、ふたりの関係を日々、新しくしているのです。
人は、与えるほどに豊かになっていきます。
しかし、その豊かさを真に意味深いものにするのは、
その土台にある、人格同士の結び付きなのです。
受け取ることを重ねることで、つながりは深く確かなものとなっていく。