『あんぱんまん』が教えてくれたこと―神話的考察

アニメ「それいけ!アンパンマン」の原作、やなせたかしさんの絵本『あんぱんまん』の神話的考察。

2014-01-01から1年間の記事一覧

(あとがき) あんぱんまんの原型は?

ここまでお付き合いいただきました皆様、 ありがとうございました。 お気づきの方も多いと思いますが、 このブログでは、あんぱんまんにイエス・キリストを 重ねるようにして、解釈しています。 私が『あんぱんまん』と出会ったのは大学3年生の時、 そして…

(16) 「そのためにこそ、たたかわねば」―魂の飢え

私たちが現在、ほんとうに困っていることといえば物価高や、公害、餓えということで、正義の超人はそのためにこそ、たたかわねばならないのです。 あとがき「あんぱんまんについて」より (やなせたかし『あんぱんまん』フレーベル館 1976年) あとがきの中…

(15) 「きょうも どこかの そらを」―閉じない物語

あんぱんまんは きょうも どこかの そらを とんでいます やなせたかし『あんぱんまん』フレーベル館 1976年 あんぱんまんは、 今日もどこかの空を飛んでいる―― この物語は閉じられることなく、 今日まで続いています。 あんぱんまんが飛ぶ理由、 それは飢え…

(14) 「すぐに また しゅっぱつです」―世界の救い方

「それじゃあ、また おなかの すいた ひとを たすけに いってきます」 あんぱんまんは、すぐに また しゅっぱつです。 やなせたかし『あんぱんまん』フレーベル館 1976年 新しい顔を作ってもらったあんぱんまんは、 休む間もなく、飛び立っていきました。 ぱ…

(13) 「まえよりも ふっくらと」―与え続けるために

「よおし、こんどは もっと おおきい ぱんに して もっと おいしい あんこを いっぱい いれておいたよ。 さあ、できた。」 あんぱんまんは まえよりも ふっくらとした かおに なりました。 やなせたかし『あんぱんまん』フレーベル館 1976年 ぱんつくりのお…

(12) 「ぱんつくりの おじさん」―造物主

ぱんつくりの おじさんは、 ぱんやきの めいじんです。 やなせたかし『あんぱんまん』フレーベル館 1976年 今回は、この物語の最後の登場人物、 後にジャムおじさんと呼ばれる、 ぱんつくりのおじさんの話です。 異世界=パン工場に住むこのおじさんは、 登…

(11) 「あたらしい かおを つくってあげるよ」 ―受け取るということ

ぱんつくりの おじさんは、 かおの ない あんぱんまんを みると、 にこにこしながら 「よしよし、また あたらしい かおを つくってあげるよ。」 と いいました やなせたかし『あんぱんまん』フレーベル館 1976年 神話において洞穴とかトンネルとかを抜けた先…

(10) 「あんぱんまんは しんだのでしょうか」

あんぱんまんは まちはずれの おおきな えんとつの なかへ ついらくしました。 あぶない! あんぱんまんは しんだのでしょうか やなせたかし『あんぱんまん』フレーベル館 1976年 顔のすっかりなくなったあんぱんまんは、 その直後嵐に遭い、暗い煙突の中へ…

(9) 「ぶじに いえまで」

あんぱんまんは こどもを ぶじに いえまで おくりとどけました。 あんぱんまんの かおは、 すっかり たべられて なくなっていました やなせたかし『あんぱんまん』フレーベル館 1976年 無事、家に帰り着いた子ども。 一方、あんぱんまんの顔は全て食べられ、…

関連書籍・記事(リンク集)

《関連書籍》 やなせたかし『あんぱんまん(キンダーおはなし絵本傑作選8)』フレーベル館 1976年 吉田敦彦・松村一男『神話学とは何か』有斐閣新書 1987年 山田永『日本神話とアンパンマン』集英社新書 2006年 《関連記事》 アンパンマンが顔を食べさせる…

(8) 「ぜんぶ たべても いいんだよ」

おなかが すいたろう。 さあ、ぼくの かおを かじりなさい。 ぜんぶ たべても いいんだよ やなせたかし『あんぱんまん』フレーベル館 1976年 子どもを背中に乗せて飛び立つあんぱんまん。 そして、自分の顔を食べるように促します。 「人格(person)」とい…

(7) 「ないているのは きみだったのか」

ないているのは きみだったのか、 もう だいじょうぶだ。 あんしんしなさい やなせたかし『あんぱんまん』フレーベル館 1976年 だんだんあたりが暗くなってきて、 とうとう泣きだしてしまった子ども。 でも、その泣き声は、確かにあんぱんまんに届いていまし…

(6) 「きれいな ちょうを おいかけているうちに」

きれいな ちょうを おいかけているうちに みちに まよってしまったのです。 やなせたかし『あんぱんまん』フレーベル館 1976年 この物語で、私たちの存在を映すもう一人の登場人物が まいごになった子どもです。 旅人と同じように、この子どもも一人ぼっちで…

(5) 「すこし げんきが ないようです」

ゆうぐれの そらを あんぱんまんが とんでいます。 でも すこし げんきが ないようです やなせたかし『あんぱんまん』フレーベル館 1976年 旅人の前では終始笑顔だったあんぱんまん。 しかし、この場面では、あんぱんまんに元気がありません。 それは、そう…

(4) 「さっと くうちゅうに とびあがります」

「さようなら、がんばれよー。」 あんぱんまんは さっと くうちゅうに とびあがります やなせたかし『あんぱんまん』フレーベル館 1976年 旅人に顔を食べさせたあんぱんまんは、 「がんばれよー」という一言を残して、すぐに飛び去ってしまいました。 旅人は…

(3) 「ちょっとだけじゃなくて たくさん たべました」

そして、 ちょっとだけじゃなくて たくさん たべました やなせたかし『あんぱんまん』フレーベル館 1976年 「ちょっとだけ」と言いながら、顔の半分までを食べてしまう旅人。 あんぱんまんは、そんなこと最初からわかっていたという風に、 笑顔で自分の頭を…

(2) 「そんな おそろしいことは できません」

「さあ、ぼくの かおを たべなさい」 たびびとは びっくりして 「そんな おそろしいことは できません」 と ことわりました やなせたかし『あんぱんまん』フレーベル館 1976年 絶望する旅人の前に現れた不思議な人間、あんぱんまん。 さらに驚くべき、彼の一…

(1) 「ひろい さばくの まんなかで」

ひろい さばくの まんなかで、 ひとりの たびびとが おなかが すいて、 いまにも しにそうに なっていました やなせたかし『あんぱんまん』フレーベル館 1976年 『あんぱんまん』―― この物語は、絶望からはじまります。 広い砂漠の真ん中で、たったひとり、…

(序) 「なんのために うまれて」

なんのために うまれて なにをして いきるのか こたえられないなんて そんなのは いやだ! (やなせたかし作詞『アンパンマンのマーチ』より) 国民的アニメ『それいけ!アンパンマン』の原作、 『あんぱんまん』を神話として読み解いてみよう、 というのが…