(12) 「ぱんつくりの おじさん」―造物主
ぱんつくりの おじさんは、
ぱんやきの めいじんです。
今回は、この物語の最後の登場人物、
後にジャムおじさんと呼ばれる、
ぱんつくりのおじさんの話です。
異世界=パン工場に住むこのおじさんは、
登場人物の中で唯一、「つくる」ことのできる存在です。
彼は、あんぱんまんの世界におけるクリエイター、「造物主」です。
あんぱんまんの命は、このおじさんの手によって
生み出されていたのでした。
ところで、このおじさんとあんぱんまん、
顔がそっくりなのです。
まるい顔に、まるい鼻に、まるいほっぺた。
あんぱんまんに、髪の毛と眉毛とひげをつけて、
帽子をかぶせてみたら、本当に同じ顔!
もちろん、おじさんはあんぱんまんの生みの親。
ふたりは親子みたいなものですから、
似ていて当然といえば当然です。
しかし、ふたりの顔が同じということには、
もう少し深い、確かな意味があるように思うのです。
前の話で、顔はその人の人格、アイデンティティーを表す、
ということに触れました。
であるならば、顔が同じということは、
人格もまた同じということになります。
ぱんつくりのおじさんとあんぱんまんは、
親子であると同時に、一つの存在なのです。
おじさんは命を生み出し、あんぱんまんはそれを人間の世界に届けます。
ふるまいは異なりますが、二人の思いは同じです。
それは飢えた人にパンを届けること。
生命の流れの途絶えた人に、新しい命を流すことです。
あんぱんまんが与えた愛は、
ぱんつくりのおじさんが与えた愛なのです。
顔のないあんぱんまんを迎えるおじさんの笑顔が、
二人の思いが同じであることを力強く物語っています。
ぱんつくりのおじさんとあんぱんまんは、一つの存在。