(11) 「あたらしい かおを つくってあげるよ」 ―受け取るということ
ぱんつくりの おじさんは、
かおの ない あんぱんまんを みると、
にこにこしながら
「よしよし、また あたらしい かおを
つくってあげるよ。」
と いいました
神話において洞穴とかトンネルとかを抜けた先というのは
異世界と相場が決まっています。
さて、あんぱんまんの落ちた煙突の先はパン工場でした。
いよいよ、あんぱんまんの秘密が明らかにされます。
パン工場では、あんぱんまんによく似た顔のおじさんが
待っていました。
おじさんは嬉しそうに、あんぱんまんのために
あたらしい顔をつくることを伝えます。
顔のないあんぱんまんは、一言も口にせず、
ただ黙って調理台の上に座っています。
これまで全てを惜しみなく与えてきたあんぱんまんは、
ここでは、ただ受け取るだけの存在です。
与えるためには、まず受け取らなければなりません。
誰かを愛するためには、
まず自分が愛されていることを知らなければならないのです。
受け取るというのは、実は、とても難しいことです。
自分にはそれを生み出す力がない、ということを認めなければならないから。
そして、受け取ったものが究極的には自分のものではないことを、
認めなければならないからです。
お金、時間、才能、つながり。
自分の「所有」しているものを、
自分への「贈り物」として受け取りなおしてみる。
すると、それは自分を満たしてくれると同時に、
やがて誰かに「贈られていく物」と変わっていきます。
与えるためには、まず受け取らなければならない。