(4) 「さっと くうちゅうに とびあがります」
「さようなら、がんばれよー。」
あんぱんまんは さっと
くうちゅうに とびあがります
旅人に顔を食べさせたあんぱんまんは、
「がんばれよー」という一言を残して、すぐに飛び去ってしまいました。
旅人は、砂漠の真ん中で飢え死にしかけていた人です。
せめて、近くの街まで送ってやってもいいのではないでしょうか・・・?
顔の半分までも与えたあんぱんまんにしては、
その後のふるまいが、あまりにもちぐはぐな気がします。
物語を読み進めていくと、次に助ける子どもはちゃんと家まで送り届けています。
ということは、この場面ではこれでよかったということ。
つまり、この旅人は元気さえ取り戻せば、しっかりと旅を続けられる人だ、
そのことが、あんぱんまんにはわかっていた、ということです。
相手の中に依存を生まないこと。
これもまた、与えるときに心を配るべきことです。
しかし、あんぱんまんがすぐにその場を去った本当の理由は、
別のところにありました。
それは、旅人に直接「お返し」をする機会を与えない、ということ。
あんぱんまんは、ただ与えるために生まれてきた存在です。
だから、「お返し」を受ける、というのはあんぱんまん的にありえないのです。
あんぱんまんが、「お返し」を受けるとき、
おそらくあんぱんまんは死んでしまうはずなのです。
旅人の立場から言えば、
あんぱんまんからは受け取ることしかできなかった、ということです。
あんぱんまんからは、受け取ることしかできない。