『あんぱんまん』が教えてくれたこと―神話的考察

アニメ「それいけ!アンパンマン」の原作、やなせたかしさんの絵本『あんぱんまん』の神話的考察。

(2) 「そんな おそろしいことは できません」

 「さあ、ぼくの かおを たべなさい」

 たびびとは びっくりして

 「そんな おそろしいことは できません」

 と ことわりました

 

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  やなせたかし『あんぱんまん』フレーベル館 1976年

 

 

絶望する旅人の前に現れた不思議な人間、あんぱんまん。

さらに驚くべき、彼の一言。

 

目の前の人間を食べて生き残るか、さもなくば飢え死にするか。

極限の状況で、私たちは生きることの本質を知ります。

 

すなわち、生きることは殺すこと。

私たちは他の命を食べて(奪って)生きている。

旅人が言うとおり、生きることは「おそろしいこと」なのです。

そしてこれは、人がなぜ孤独なのか、という問いの答えでもあります。

 

しかし、あんぱんまんはもう一つの生き方を教えてくれました。

それは「与える」という生き方。自己犠牲という生き方。

自分の命を進んで与えることで、相手を生かす、という生き方です。

 

生きることは奪うこと。与えることは生かすこと。