(2) 「そんな おそろしいことは できません」
「さあ、ぼくの かおを たべなさい」
たびびとは びっくりして
「そんな おそろしいことは できません」
と ことわりました
絶望する旅人の前に現れた不思議な人間、あんぱんまん。
さらに驚くべき、彼の一言。
目の前の人間を食べて生き残るか、さもなくば飢え死にするか。
極限の状況で、私たちは生きることの本質を知ります。
すなわち、生きることは殺すこと。
私たちは他の命を食べて(奪って)生きている。
旅人が言うとおり、生きることは「おそろしいこと」なのです。
そしてこれは、人がなぜ孤独なのか、という問いの答えでもあります。
しかし、あんぱんまんはもう一つの生き方を教えてくれました。
それは「与える」という生き方。自己犠牲という生き方。
自分の命を進んで与えることで、相手を生かす、という生き方です。
生きることは奪うこと。与えることは生かすこと。