『あんぱんまん』が教えてくれたこと―神話的考察

アニメ「それいけ!アンパンマン」の原作、やなせたかしさんの絵本『あんぱんまん』の神話的考察。

(1) 「ひろい さばくの まんなかで」

 ひろい さばくの まんなかで、

 ひとりの たびびとが おなかが すいて、

 いまにも しにそうに なっていました

  

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  やなせたかし『あんぱんまん』フレーベル館 1976年

 

 『あんぱんまん』――

この物語は、絶望からはじまります。

 

広い砂漠の真ん中で、たったひとり、食べるものがない。

やがて日も落ちようとしています。

 

孤独と飢え。

どうして、この旅人は絶望的な状況にあるのか。

その理由は、物語のなかでは明かされません。

 

むしろ、人は始めから孤独であり、満たされない存在である、

そのことを、この物語は私たちに強力に突きつけます。

 

人は、孤独であり、満たされない存在である。