(1) 「ひろい さばくの まんなかで」
ひろい さばくの まんなかで、
ひとりの たびびとが おなかが すいて、
いまにも しにそうに なっていました
『あんぱんまん』――
この物語は、絶望からはじまります。
広い砂漠の真ん中で、たったひとり、食べるものがない。
やがて日も落ちようとしています。
孤独と飢え。
どうして、この旅人は絶望的な状況にあるのか。
その理由は、物語のなかでは明かされません。
むしろ、人は始めから孤独であり、満たされない存在である、
そのことを、この物語は私たちに強力に突きつけます。
人は、孤独であり、満たされない存在である。